薬不足は、供給の問題というより“医療の設計問題”なのか?
日本の薬不足は、もはや一時的な供給混乱ではなく、日常診療を揺らす構造課題になっています。背景には2020年以降の後発医薬品メーカーの品質問題を起点とした供給不安があり、現在も多くの医薬品で安定供給が大きな課題として残っています。
今回の日経記事が示しているのは、この問題が単なる在庫不足ではなく、医療の使い方そのものに根差しているということです。薬局の備蓄を厚くする、再編を進める。こうした対策は必要です。けれども、処方の流れ自体が変わらなければ、不足への対応は川下での調整にとどまりやすいのかもしれません。
ここで見えてくる構造変化は、薬不足対策が「供給確保」だけでは完結しなくなっていることです。日本では同じ効能の薬が多く、医師ごとの処方のばらつきも大きい。その結果、薬局は多品目を少量ずつ抱えやすくなり、在庫管理が難しくなります。だからこそ、地域ごとに推奨薬を整理する地域フォーミュラリーは、供給安定の観点からも重要性を増しています。
さらに本質的なのは、低価値医療の削減が供給安定策でもあるという点です。必要性の低い処方や、慣習的に続いている処方が積み上がれば、限られた医薬品の供給はより逼迫します。風邪への抗菌薬処方抑制のように、処方の適正化は医療費の問題にとどまらず、本当に必要な患者へ限られた資源を振り向ける意味も持ちます。
今後の制度設計は、薬を「どう作るか」だけでなく、どう選び、どう処方し、どう流すかまで含めて再設計されていくはずです。供給安定は製造能力の問題であると同時に、需要の標準化と医療提供体制の問題でもあります。
このニュースから見えてくるのは、新薬開発だけでは医療の持続可能性は支えきれず、低価値な処方を減らし、必要な医療へ資源を振り向ける設計が欠かせないということです。
薬不足は、サプライチェーンの話である前に、医療システム全体の問いなのだと思われます。
参考にした記事はこちらです。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD211LG0R20C26A3000000/