精密医療は、医療保険の構造を変えるのか?

今回紹介するのは、公的医療保険の対象外となる自由診療の費用を保障する民間保険商品の投入が相次いでいるというニュースです。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO94941870R10C26A3EE9000/

三井住友海上あいおい生命は、がんの遺伝子パネル検査の費用を保障する保険を発売しました。はなさく生命やネオファースト生命なども、がんの自由診療費を保障する商品を拡充しています。

背景にあるのは、医療技術の進展です。がんの遺伝子パネル検査のような精密医療は、患者ごとの遺伝子変異を調べて最適な治療法を探すものですが、公的保険で利用できる条件は限られています。早期に検査を受ける場合は自由診療となり、費用は50万〜100万円程度にのぼることもあります。
さらに近年は、欧米で承認されているものの日本では未承認の抗がん薬も増えています。国立がん研究センターによると、20〜24年に米欧で承認されたが日本では未承認のがん治療薬は72に達し、10〜14年の9から大きく増えました。中には月額7000万円を超える薬剤もあるとされています。

こうした状況の中で、公的医療保険だけではカバーできない領域を民間保険が補完する動きが広がっています。政府の「新しい資本主義」の政策文書にも、保険外診療を補完する民間保険の開発を推進する方針が盛り込まれています。

ここに見えるのは、医療制度の構造の変化です。日本の医療はこれまで、公的医療保険を中心とした単一の制度で支えられてきました。しかし精密医療や未承認薬のような新しい治療が増える中で、公的保険だけでは対応しきれない領域が広がりつつあります。

その結果、「公的保険」「自由診療」「民間保険」が組み合わさる多層的な医療システムが形成されつつあるとも言えるのかもしれません。医療技術の進歩は、治療のあり方だけでなく、それを支える制度や金融の仕組みも変えていきます。