医薬品は「大量生産」ではなく「患者ごとに設計」する時代へ?
今回取り上げたいのは、「1人の患者のための薬」を事業として開発する企業が誕生したというニュースです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0473I0U6A300C2000000/
2020年のノーベル化学賞につながったCRISPR研究で知られる研究者らが、米国で新たに創業した企業は、遺伝子編集技術を用いて患者ごとに設計された個別化医療の開発を目指しています。
背景にあるのは、「Milasen」や「k-abe」といった事例です。
いずれも特定の患者の遺伝子変異に合わせて設計された治療法で、研究者や企業の協力によって投与まで実現した、いわば“奇跡の治療”と呼ばれてきました。
これまでこうした治療は、研究者主導の取り組みとして個別に実現してきたものであり、医薬品として承認されることを前提とした開発ではありませんでした。
しかし現在、FDAでは「生物学的妥当性に基づく承認経路(plausible mechanism pathway)」という新しい枠組みが提案され、患者数が極めて少ない疾患に対する個別化医療を企業が開発・承認する道が議論されています。
もしこの枠組みが確立すれば、これまで“例外的な治療”だったものが、企業による継続的な医薬品開発の対象になる可能性があります。
医薬品開発はこれまで、多くの患者に共通する薬を開発する「大量生産型モデル」で進んできました。
しかし遺伝子編集やRNA医薬などの技術が進むにつれ、患者ごとに設計された治療をプラットフォームとして開発するモデルが現実味を帯び始めています。
もちろん、個別化医療の承認や安全性評価、市販後モニタリングなどには新しい課題も伴います。
それでも、もし「n=1の医療」を持続可能な形で開発できるようになれば、これまで治療法が存在しなかった多くの疾患に新たな道が開かれるかもしれません。
皆さんは、このような個別化医療の広がりをどのように感じますか。